Challenge ラヂヲ
やる気!元気!本気!
チャレンジするあなたを全力で応援します!!
今日も全員参加でチャレーっす!!!

●3/24(水) LACCO TOWER(生電話出演)、クレナズム(コメント)
●3/25(木) なきごと(生電話出演)

●3/29(月) クリープハイプ(生電話出演)
●3/30(火) back number(ゲスト)





2020年10月1日から
every mon.-thu. 21:00〜23:00 ON AIR に変わりました!!

@東邦ホテルスタジオ
MAIL cr@crossfm.co.jp
FAX 092-262-0787

【担当DJ】
・コウズマ ユウタ

【完成】 歳末企画「みんなでつくろう!冬物語!」
2016/01/02
歳末企画「みんなでつくろう!冬物語!!」
主人公から始まり、登場人物の背景、物語の行方、結末を、
ドラマチックに想像しながら、みんなで考えた断片をつなげて
物語を作るこの企画、多数のご参加ありがとうございました!

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 ■◇ みなさんの案を繋ぎ合わせ、完成しました ◇■
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タイトル* さよなら、ディセンバー。

この物語の主人公は、栗山真白(ましろ)23歳。
真っ白な肌に、真っ黒な長い髪。
雪国で生まれて、雪国で育った、真白ちゃんは、
口数はそんなに多くないが、音楽と漫画が大好き。

彼女は、パティシエ見習いとして日夜、頑張っている。
職場の仲間に、マロンちゃんと呼ばれている彼女の夢は
もちろん自分のお店を持つこと。 仕事は楽ではないが、彼女は日々努力を重ねていた。

真白の働くお店、パティスリー・ヒロダは、
ご主人の広田さんと、その奥さんが切り盛りし、
真白以外にも たくさんの従業員が働く人気店だった。

広田さんは、ごつい体つきはと、対照的に、
繊細で、素朴なケーキを作るので、地域の方はもちろん、
わざわざわ遠方からも買いにくるお客さんで お店はいつも賑やかだった。

従業員の中では、先輩の鷲蓮(しゅうれん)さんが
真白に対しては、特に厳しかった。
しかし、その厳しさは、真白にとってはありがたいこと。
先輩の技、1つ1つを吸収しようと、
真白は必死に、毎日頑張っているのだった。
〜〜〜

真白には、バーテンダーの彼氏、津田健太(あだ名・ツダケン)がいた。
年は、真白よりも1つ上の24歳。
バイクが好きで、以前はよく真白をバイクの後ろに乗せて
あちこちツーリングに出かけることもあった。

でも最近は、すれ違いの生活、あんまり話も出来ていない。
玄関に置いたヘルメットも、ホコリをかぶっている。

真白自身、二人の関係をどうしようか、迷いつつも、
今は仕事に夢中!そんな日々を過ごしていた。

そんなある日、たまには・・・と思い津田が働くバーに 真白は出かけて行った。
しかしそこで見たのは、カウンターに座る女性の肩に
手を伸ばしている津田の姿だった。
一瞬、目が合ったが、なにも言わずに帰る真白。。。

どんな事情だったか、真実はわからないけど、
あの日以来、真白と津田の溝は、また少し深くなった。

〜〜〜

ある日、真白は、仕事帰りにスーパーに寄った。
最近、忙しくて全然自炊なんて出来ていなかったけど、
ちょっとだけ早く帰れたので、気分転換に、ちゃんとご飯でも作るか!
そう思って、立ち寄ったスーパー。メニューは鍋に決めていた!

「すいませーん、鍋のスープはどこにありますか??」店員に問いかける真白。
「ちょっと、待ってください、、、あ、どうぞ、こちらへ!」

忙しい中、商品のところへ案内してくれる店員。
真白は、その店員の手の指に、ペンだこがあるのを見つけた。
さらにその店員の名札には“高橋”という名前の横に
いくつもの、かわいいイラストが描いてあった。
それを見て、漫画好きの真白は、思わず話しかけた・・・
真白「名札のイラスト、自分で書いたんですか??
   もしかして、漫画描いてたりするんですか??」

高橋「よく、わかりますね!まだまだ修業中ですけど・・・
   今日は鍋ですか??僕は、たまに一人鍋、やりますよ!」

真白「そうなんですね!!今日は私も一人鍋です!!笑
   あ、もしよければ・・・」

そのときレジの方から「すいませーん!!」と呼ぶ、お客さんの声。
高橋という名札をした男はペコリとお辞儀をしてレジに行ってしまった!

真白は、去っていくその人をみながら「鍋、一緒にどうですか??」
と、いきなり言おうとした自分に驚いていた。
・・・これが、高橋翼と真白の出会いだった。

〜〜〜

高橋翼、22歳。
専門学校を卒業し、今は、深夜のスーパーでアルバイトをしながら
夢をおいかけていた。彼の夢、それは漫画家になること。

〜〜〜

高橋は、ある日、近所のケーキ屋に、ケーキを買いに行った。
その店には何度か行ったことがあって、とくにマロンケーキがお気に入りだった。

ケーキの入ったショーケースをみて、マロンケーキ1つ、
と注文をしながら顔を上げた時、目の前にいた店員を見て、高橋は驚いた。

それは、数日前の夜、スーパーで会って以来、
気になっていたあの女の子。その人だったのだ。
名札に、真白(あだ名は・マロンちゃん)と書かれた彼女は、
「こないだはどーも!」と、高橋にニッコリ笑顔を見せた。

真白の名札には、可愛いイラストが描かれていた。

「イラスト、上手ですね??」そう高橋が声をかけると・・・
「実は貴方の真似をしたんです」と真白は答えた。
二人は一緒に笑いあった。

〜〜〜

漫画が好きな真白と、漫画を描いてる高橋は、急激に親密になっていった。

高橋が書いてる漫画は、いわゆる少女漫画。若い男女の恋模様が描かれていた。
高橋はその作品で、漫画新人賞に応募しようと考え、制作を進めていたが、
問題がいくつかあった。大きな問題点、それは、漫画の細かな描写。
恋愛経験もそんなに多くなく、かつ現在は恋人がいない。
そんな高橋の知識では、、、リアリティーが足りない部分が多々あった。

例えば、初めてのデートで遊園地に行くシーン。
真白はそのシーンを読みながら、物足りなさを感じた。

真白「女の子とデートで遊園地に行ったことある??」
高橋「グループではあるけど、2人きりではないかな・・・」
真白「それじゃダメだよ!!準備して、今すぐ!出かけるよ!!」
真白は、高橋を連れて、一番近い遊園地に向かった。

その日の経験は、高橋に大きな変化をもたらした。
高橋は再度、遊園地のシーンを書き直し、
その出来上がりをみた真白は、満足そうに大きく、頷いた。

そのとき以来、二人はいろんなところに行った。
イルミネーション、おしゃれなディナー。水族館。

でもそれはあくまでも、取材。漫画の中の主人公たちにリアリティを出すため!
そんな名目で、二人は あちこちに出かけたのだった。

デートの時、真白は、いつも自作のケーキを持参した。
真白は、年明けに行われるスイーツコンテストに出場しようと、
仕事の合間を縫って、オリジナルのスイーツ作りをやっていたのだ。
小さな箱に入っている真白のケーキは、いつも横に倒れていた。
「私、お店でもケーキを箱に入れるのが苦手で、たまに倒して怒られちゃうんだよね。」
そんなことを言う真白のケーキは、毎回、趣向を凝らした仕上がりで、高橋を驚かせた。

甘いものは、ちょっと苦手な高橋だったが、
試食をしては、高橋なりの意見などを、真白に伝えた。
さらに、デートの途中、ケーキ屋さんやスイーツショップにも立ち寄った。
これも、真白にとっては、オリジナルスイーツ作りの研究の一環だった。

逆に、高橋は、取材のたびに、毎回毎回、
真白をモデルにしたイラスト(似顔絵)を描いてくれた。

出かけるたびに1枚ずつ。それが、部屋に増えるたびに、
真白はどんどん 高橋に惹かれていくような気がしていた。

〜〜〜

デートの時。二人はなるべく物語に忠実に行動していた。
その方が、よりリアリティーが出るだろうと思い、
意識していたわけではないが、自然にそうなっていた。

例えば、漫画の中の男女が、水族館に行き、初めて手を繋ぐシーン。
そのシーンを描くために、実際に水族館に行った真白と高橋は、
漫画の中の男女のように、水族館で、初めて、手をつないだ。

動物園で、彼女がお弁当を振る舞うシーンを描くために
動物園に出かけた際は、真白は頑張ってお弁当を作っていった。

しかし、遊園地で初めてキスをするというシーン。
この時ばかりは、真白も高橋も、、、困ってしまった。
そして、結局、二人は、キスを、出来なかった。

真白は、「だって私たちは物語の主人公じゃないもんね。
真白と翼だから、私たちのペースでやって行かなきゃね。」
そんなセリフを言って、可愛く笑った。

〜〜〜

そのデートの帰り、真白は電車の中で眠ってしまった。
高橋の肩に寄りかかり、眠ってしまう真白。

休みの日以外は、朝から晩までケーキ屋で働いている。
ほんとは、疲れているんだ。それなのに付き合ってくれてるんだなー。
・・・そんなことを思う高橋。
真白からは、いつもバニラエッセンスの甘い匂いがした。

感謝の気持ちを胸に、高橋は真白の寝顔をのぞき込んだ。
真白は、少しだけ笑っているように見えた。
高橋は、真白のおでこにキスをした。それは、高橋自身もびっくりする行動だった。

真白は寝ている。高橋は、ドキドキしている鼓動を抑え、
真白の方に寄りかかり、自分も眠ろうとした。

〜〜〜

高橋と出かけるたび、真白は思うことがあった。
高橋の漫画に必要な場所に行くために、
真白は毎回、念入りな下調べをして行先を決めていた。

その下調べをやっていると、いつも津田のことが浮かんでくるのだった。
なぜかというと、津田は、いつも、真白が、コレコレを食べたい!
と要望を言うと、いいお店をすぐ知っていたし、ドコドコに行きたい!
というと、あれこれ調べて、すぐに連れてってくれるて人だったから!

津田は、私のためにいろんなことをしてくれていたんだ。
津田に大切にされていたことを感じる真白は、ため息を吐いた。

〜〜〜

ある日、真白と高橋は、取材のために郊外の公園に出かけた。
が、この日は、真白も高橋も、疲れていたせいもあってか
些細なことで喧嘩になってしまった。。。

言い合う二人は、とりあえず、頭を冷やそうと別々に帰ることにした。
帰り道、真白が国道をとぼとぼ歩いていると、
その横に1台のバイクが横に止まった。ふと見ると、それは、津田だった。

「あれ??えっと・・・乗ってく??」 
津田は、なにも聞かなかった。ひさしぶりの二人乗り。

津田はちょっと遠回りして、以前よく行っていた砂浜へ
夕日を見に、真白を連れて行った。
夕日を見ながら、それでも津田はなにも聞かなかった。

津田が口にしたのは・・・「人生ってさ、面白いよね。」
そんな言葉だけだった。その言葉に真白は少し笑顔で頷いた。

〜〜〜

高橋は、作品の中で、また難しいシーンにぶつかった。
それは男女がBARで別れ話をするシーン。
お酒をそんなに飲まない高橋は、BARなんて行ったことなんてなかった。
そこで高橋は、いつものように、真白に相談した。

高橋「今度は、BARに行ってみたいんだ!一緒にどう??」
真白「え??BARに!?」
高橋「そう、どこか知ってるお店とかないかな??」
真白「BAR・・・あるには、あるけど・・・」
高橋「そこに連れて行ってくれないかな???」

真白は、だまって頷いた。
知っているお店、それは彼氏の津田が働いているBARだった。

〜〜〜

高橋が連れていかれたBARは、オシャレなお店だった。
店内に入り、あたりを見回す高橋。
するとイケメンのバーテンダーが出迎えてくれた。
次の瞬間・・・

津田「あれ?!真白、どうしたの??」
真白「いや、ちょっとね・・・」
高橋「二人は、お知り合いなんですね??」
真白「知り合いっていうか、、、一応、、、私の彼氏」
津田「一応、、、ってなんだよ!てか、そちらさんはどなた?」
高橋「え?・・・あ、僕は、高橋翼といいます。
   今日は、ちょっと、あの、漫画を描く取材で、
   どこか知っているBARがないか〜って、真白さんに相談して
   ここに連れてきてもらったんです。」
津田「ふーん、そうだったんですね。中へ、どうぞ!」

微妙な空気が流れる3人。
店内には、沈黙が訪れた。

〜〜〜

数日後、真白のもとに、津田から突然、電話がかかってきた。
最近、連絡なんて、全然無かったのに・・・
と思いつつ電話に出ると、津田は、風邪をひいたという。

真白は、津田の家にひさびさに向かった。
寝込む津田を看病しながら、ひさびさに訪れた津田の部屋を見回す真白。。。

そこには、たくさんの二人の思い出の写真。
津田は、いろんなところに連れて行ってくれた。
動物園や水族館、雪山にスノーボードにも行った。
最近は、お互い忙しくてすれ違ってばかり。
それに高橋と過ごす時間が多かったけど・・・津田と過ごした楽しい時間が思い出された。

それと、もう1つ。津田の部屋に[Alexandros]のCDが並んでいた。
このバンドは、真白が今、一番はまっているバンド、
ついつい口ずさんでしまうほど、大好きなバンドだけど、
高橋には「アレキサンドロスって誰?」って言われてしまった。。。

その[Alexandros]のCDが、津田の部屋には並んでいた。

(ドロスの事、話したことなかったけど、やっぱり感性が似てるんだ・・・)
真白は、はーっとため息をつきつつ、眠っている津田の顔をただただ見つめていた。。。

〜〜〜

その頃、高橋は、自分の部屋にある真白の似顔絵を眺めていた、。
高橋の部屋には、真白の似顔絵が何枚も置いてあった。
その似顔絵は、どれもさみしそうな表情。

津田のことを思ってなのか、たまに見せる真白の複雑な表情に高橋は気付いていた。
そしてその顔が心から消えずに、部屋で一人、悲しげな表情の真白の似顔絵を描いていた。
その似顔絵は、1枚、また1枚と増えていった。。。

〜〜〜

高橋の描いている漫画が1本、完成した。
真白と高橋が出かけたデートがモチーフになり、
リアリティーも加わった、素晴らしい仕上がりだと真白は思った。

しかし、その物語の主人公の二人は、
最初は 仲の良かったが、だんだん離れていき、
幸せな結末を迎えず、別れてしまう設定になっていた。

当初の流れからすると、こんな話になるはずじゃなかったはずだ。
そのストーリーを読んでいるうちに、真白は1つ思いついた。
高橋は、津田と自分のことを気にして、自分と距離を置こうとしているのではないか??
確信は持てないが、そんな思いが、物語の主人公の
悲しい運命に投影されているように感じた。。。

真白「でも私たちの物語とは、関係ないもんね」
その言葉に高橋はハッとした。全てを見透かされたような気持ちになった。
そして、年内に新たな作品を完成させよう、そう心に決めたのだった。

〜〜〜

まもなくクリスマスがやってくるそんな頃・・・
高橋は、スーパーへのバイトを終えて、家路を急いでいた。
その日は、強い雨が降っていた。

家に向かう国道を速足で歩いていると、通りを挟んだ
向こう側の歩道で言い争う、男女の姿を見つけた。

「だから、違うって、あれはただ、失恋したっていうお客さんを・・・」
「そんなことは関係ないし、どうでもいいの!!」

あれ!? あれって、真白と、、、津田さん??
しかしはっきりと二人だとは確認できない。でも、あれはたぶん・・・。
しかし、高橋はどうすることも出来ず、ただうつむいて家に向かった。

〜〜〜

ついに迎えた、クリスマス・イブ。

夜遅く、仕事が終わった真白は、忙しい1日を終え、ホッとする。
誰とも会えなかった〜 とさみしい気持ちを抱えたまま、
真白は、帰り道、一人で、ツリーを見に行くことにした。

ちょうどそのころ、新人賞に向け
漫画を描いていた高橋は、ちょっと行き詰まり、
気分転換に〜と外へ出て散歩を始めたところだった。

偶然にも二人が向かった先は、小さな町の真ん中にあるクリスマスツリー。
ツリーの下にやってきた真白。キレイだなーと見上げたその瞬間、
時間が遅いため、ツリーのライトアップが消えてしまった・・・

がっかりして目線を落とす真白。
すると・・・目の前に高橋が立っていた。

真白「どうして、ここに?!」
高橋「真白ちゃんこそ、どうして??」

二人は、顔を見合わせて笑った。ちょうどそのとき、
空から、ポトリ、ポトリと、その年、最初の雪が降り始めた。
あたりはあっという間に真っ白な世界になる。。。

「雪がキレイ!」真白は笑った。それを見て、高橋も笑いがこぼれた。
二人は、降り積もる雪の中、いつまでも、はしゃぎあっていた。

〜〜〜

クリスマスイブのBARは、思いのほか忙しかった。
ずーっと忙しなく動いていた津田に、
一人の客がたばこを買ってきてほしいと頼んできた。

寒空の下、コンビニまで買いに行く津田。。。
そのとき、、、ふと通りかかったクリスマスツリーのところで
はしゃいでるカップルをみかけた。

そうだよな、クリスマスイヴだもんな〜
なんて思ってよく見てみると・・・

それは、高橋と真白だった・・・。
もちろん、声はかけれなかった。
津田はうつむいて、コンビニに向かった。。。

〜〜〜

25日、クリスマス当日。
真白は、体調を崩してしまった。

クリスマスに向けての忙しさで、相当な無理をしていたことに加え
前日、雪の中ではしゃいだせいもあったのだろう。。。
目を覚ますと、38度を超える熱が出てしまった。

クリスマスだというのに・・・真白は、申し訳ない気持ちで一杯だったが
この日は、お休みを貰うことにした。

ぼーっと寝ている真白。するとインターホンがなった。
お店にケーキを買いに行き、事情を知った高橋がやってきた。
高橋は、風邪薬と、フルーツやゼリーなど、必要なものを買ってきてくれた。
真白は、この高橋の優しさがうれしかった。
フルーツを食べ、薬を飲んだ真白は、しばらく眠ってしまった。
少し時間が経ち目を覚ますと、、、まだ体は熱っぽかった。
ふと横を見ると、台所の方に、津田の姿があった。

なにをしてるんだろう??と思っていると、津田は、マグカップを運んできた。
その中身は、蜂蜜ジンジャードリンク。

これは、真白が、風邪をひいた時に、いつも津田が作ってくれる定番の飲み物。
真白の風邪は、不思議と、この蜂蜜ジンジャードリンクを飲むと
あっという間に治ってしまうのだった・・・。

津田「真白はいつも、大変な時、大事なときに、風邪ひくじゃん?
   だからもしかして、と思って来てみたらほんとに寝てるんだもん。
   これ飲んで、とりあえず元気になってね。あと、こないだはごめん。」

津田は、それ以上はなにも言わず、帰っていった。
「蜂蜜ジンジャードリンク」は、のどにちょっと染みたけど、
優しく真白の体に広がっていくようだった。

そしてそのまま眠った真白。数時間後には、すっかり熱は下がっていた。

〜〜〜

真白の家をあとにした津田。
その手の中には、渡せずじまいになってしまったプレゼントがあった。

それは真白のために買ったネックレス。
そのネックレスは、「もう一度、ちゃんとやり直さないか?」
という言葉と一緒に、真白に渡すつもりだった。しかし、渡せなかった。。。

真白の部屋には、たくさんの真白の似顔絵があった。
それは、おそらく、あの高橋が書いたものだろう。
どれも津田が最近見ていない、素敵な笑顔の真白の表情ばかりだった。

それに昨日の夜見た、二人の笑顔。
きっと風邪をひいたのも、昨日、雪の中はしゃいだせいだろう。
そんな感情が入り乱れて、津田はプレゼントも渡せず、気持ちも伝えられなかった。
「何やってんだ俺・・・」そう言って、津田は、寒空を見上げBARに向かった。
BARに着いた津田は、片隅にあるピアノの前に座った。
バーテンダーになる前、津田は音大生だった、
幼少のころから続けたピアノで進学し、ピアニストを目指していた。

しかし、練習をし過ぎたことによる過度の腱鞘炎に悩み、
さらにコンクールに落選、その夢はあきらめざるを得なかった・・・
それ以来、人前でピアノを引くことはほとんどなかった。

そんな津田が、静かにピアノの前に座った。
頭の中には、真白への様々な思いがあふれていた。
誰に聞かせるわけでもなく、自分の気持ちを静めるために
夜、誰もいないBARで ピアノを弾きはじめた、津田。
その悲しい音色は、店の前を通る人の耳にかすかに聞こえていた。

その日以降、津田は、BARの営業が終わった
誰もいない時間に、時よりピアノを弾くようになった。。。

〜〜〜

体調もなんとか回復。職場に向かう真白。そこに、見たことのない女性が話しかけてきた。
その人は、津田の友達と名乗る人物で 話を聞くと、以前、真白がBARに行った時に、
津田が肩に手を添えていた、あの女性だった。

「きっと、浮気を疑ってると思うんですけど
 あの時、津田さんは、私の愚痴を聞いてくれてただけなんです。
 最低な彼氏と別れた愚痴をたっぷり聞いてくれて、
 その上で、大丈夫、大丈夫と、何度も私に言ってくれたんです」

事情を知り、頷く真白。続けて彼女はこう話し出した。

「津田さんは、お店でもいつもあなたの話ばっかりしています!
 ケーキを作るのが本当に上手だとか、
 仕事頑張りすぎて心配だとか、そんな話ばかり。
 私なんて、そんなに思われたことないから、うらやましいです!
 それじゃ、私はこれで。お仕事頑張ってください!」
そういうと、その女性は去っていた。
たしかにあの日のことは真白の心に引っかかっていた。
しかも、真白の知らない津田の一面を聞かされた。

真白は、仲が良かったころの津田のことを思い出していた。。。

〜〜〜

世間は大晦日を迎えた。しかし、真白にとっても高橋にとっても、
大晦日どころではない、そんな日々を過ごしていた。

真白は、来年行われる、スイーツコンテストの全国大会に
出品するスイーツの制作に追われていた。
お店が休みのこの年末の時期の厨房を利用して
出品するためのレシピと応募用の写真を撮るために、
ギリギリで作業をしていたのだ。

そんな真白を見守る男の姿があった。
厳しい先輩、鷲蓮(しゅうれん)だった。
実は、ひそかに、真白の頑張りを陰で見ていた鷲蓮(しゅうれん)。
口を開けば厳しいことを言ってしまうが、
いつも彼は、頑張る真白のことを見ていたのだった。

そう、鷲蓮(しゅうれん)は真白に対し、
誰にも言えない密かな思いを抱いていたのだった。。。

〜〜〜

同じころ高橋の方も、新たな漫画の制作に没頭していた。
クリスマスのあと、お互いに連絡を取る暇もないほど
真白も高橋も、それぞれ、制作に打ち込んでいた。

そして、大晦日。
高橋は、ついに新たな作品を完成させた。
その作品は、まぎれもなく真白がいてくれたからこそ、
緻密さをまし、完成させることが出来たものだった。
この漫画を早く、真白に見せたい!!
そう思い、高橋は、真白の働くケーキ屋に向かった。
店の前に付き、中をのぞき込むと・・・
大晦日だというのに、真白は、一人、スイーツ作りに熱中していた。

高橋は、真白には声をかけず、店の前に止めてあった
真白の自転車の籠の中に、漫画を入れ、店を後にした。

〜〜〜

なんとか、スイーツが完成した。
真白は、達成感と、同じくらいの疲労感を感じていた。
なんとか、間に合った。。。

気付けばもう、新たな年を迎える時間が迫っていた。
店の外に出る真白。すると・・・

自転車の籠に、、、漫画の原稿を見つけた。
どうやら、高橋の漫画の原稿の コピーらしい。

1枚、また1枚と、ページをめくっていく真白。
真白の目からは、1粒、また1粒、涙があふれた。

そこには二人で行った様々な場所、シーンが盛り込まれた、
新たな、そして素晴らしい、高橋の作品が出来上がっていた。

読み進めて行く真白。
そして、あるページに来たところで、真白は息を飲んだ。
そのページには・・・真白が今まさに完成させたスイーツと
まったく同じものが描かれていたのだった。

それは、かまくらをイメージしたスイーツだった。
雪国出身の真白。小さいころ、今は亡きおばあちゃんと
一緒に遊んだ かまくらの思い出。。。
そんな思いが形になったのが、今回完成したスイーツだった。

お餅を使ってて、中はクリーム。そして、大きな栗を1つ。
栗を入れたのは、自分の名前が栗山で、あだ名がマロンなわけだし、
そしてなにより、高橋の好物がマロンケーキだったから。
真白的に、優しい甘さに仕上げた。

かまくらの話は、たしか前に、高橋にしたことがあった。
宮崎出身の高橋は、かまくらをみたことがないらしく 真白の話を熱心に聞いていた。

けど、ここ数日、口もきいていないので、
どんなスイーツを作っているかは話していない。なのに・・・

このページを見た真白は、
自分の中で気持ちが固まっていくのを感じた。
そして、おいかけるように、走り出した。。。

〜〜〜

真白がたどり着いたのは・・・津田のいるBARだった。
扉を開けると、津田は、お客さんのいなくなった店内に一人でいた。
店内に入る真白。見つめる津田。
そして、真白は、津田に、正直な気持ちを話し始めた・・・

「今までありがとう。あなたは今までもこれからも大事な人です。
でも恋人という関係は、もう終わりにしたいと思います。。。」

立ち去ろうとする真白を津田が呼び止める。。。
そして津田は、静かにピアノに向かい、弾き始めた。
それは真白にとって、久々に聞く、津田のピアノだった。
そのピアノを聞きながら、真白はこれまでの
津田との様々な思い出を 頭の中に浮かべていた。
そして、勇気をもらった真白は、ピアノを弾き続ける津田の背中に
ありがとう。。。とつぶやき、店を出たのだった。

真白が去ったあと、津田はまだピアノを弾いていた。
そして、ピアノを弾き終わった時、津田も1つの決心が固まっていた。

〜〜〜

津田のBARをあとにした真白は、ぼんやりとしたまま歩いていた。

そしていつのまにか、町はずれの小さな遊園地についていた。
ここは、初めての高橋とのデートでやってきた遊園地。

小さな遊園地なので、大晦日はお休み。
入り口の看板に小さなライトがついてるくらいで、
だれもいない、すごく静かな遊園地。

ふと、気付くと、らちらほらと雪が降りはじめた。
「なんで私、こんなところに来ちゃったんだろ。バカみたい。」つぶやく真白。

するとその時。真白の後ろから聞き慣れた優しい声が真白の名前を呼んだ・・・
振り向くと、、、そこには高橋がいた。

真白「なんで??どうしてここに!?」
高橋「だって、僕らが最初にデートをした場所だからね。」

二人は、真っ暗な遊園地をぼんやり眺めていた。
すると・・・突然、看板に明かりがともった。
驚く二人。すると・・・中から一人の人影が!

その人は・・・いつも厳しい先輩、鷲蓮(しゅうれん)だった。
「どうしてここに??」
そう聞く真白に、鷲蓮さんが話始めた。

鷲蓮「ここは、俺の実家。つまりこの遊園地を所有してるのは、うちの両親だ。
   うちの親は、ほかにもいろんな事業を手広くやってて、
   いうなれば俺は、世間一般で言うところの御曹司ってやつ。
   でも、そんな決められた人生が嫌で、自分の道を探してるうちに
   広田さんに拾われて、世話になってるっちゅーわけだ。
   それとな、、、真白!お前の頑張りは いつも見てたぞ。」

驚く真白。鷲蓮さんは話を続ける。

鷲蓮「俺には、妹がいた。数年前、事故で無くなってしまったけどな。
   その妹が、どーも、真白にそっくりで、なんだか妹と重なってなぁ、
   真白のことが ずっと気になってたんだ。。。。
   やっとケーキも出来たみたいでよかったわ!
   お祝いに、今日は、遊園地、朝まで貸し切りで、楽しんでいいぞ。」

驚く二人。町はずれの小さな遊園地は、二人だけのために解放された。
そして鷲蓮さんは、初めて見せる優しい笑顔で
真白に微笑むと、どこかへ行ってしまった・・・。

〜〜〜

二人だけの遊園地を、真白と高橋は楽しんだ。
その中にコーヒーカップがあった。
乗り込む2人、クルクルまわして、はしゃぎ、笑い声にあふれた。
が次の瞬間、、勢いをつけすぎて、バランスをくずした真白が、
抱きつくように、高橋によかりかかった・・・

その瞬間、さっきまで笑いあっていた2人は、
急に真剣な表情で見つめあった、、、ゆっくり回るカップ。
だんだんスピードが落ちていき、2人は見つめあっていた。

すると突然、、、少し離れた場所で、大きな花火が上がった。
ビックリした勢いで、2人は、初めてのキスをした。

頭が真っ白になった真白は、足元をフラつかせながら、
高橋に抱えられ、ゆっくりコーヒーカップから降りた。
時刻は、ちょうど0時を回ったところ。 新年を祝う花火は上がり続けていた。

真白「今、キスした??」
高橋「今、キスした。」
真白「もう1回・・・、お願いします。」
そういうと二人は、もう一度、長いキスをした。

〜〜〜

まもなく年を越す時刻。もうすぐ新たな年を迎える。
そんな中、津田は、さっき真白から伝えられたセリフを思い出していた・・・。
そして、自分の決心についても、改めて考えていた。

ピアニストの夢をあきらめたあと、なんとなくやり始めたバーテンダーの仕事。
BARのオーナーからは、店長にならないか?なんて話も貰っていた・・・

たしかに、自分の店を持ちたい!そんなことを思ったこともあったけど、
だけど、それが自分の人生をかけて、おいかける夢ではない事は、
津田も、薄々、気付いていた。

実家の両親からは、家業である農家の跡を継いでほしい。
学生のころから、何度もそういわれていた。
そんな言葉から、逃げるように生きてきた自分。
でも、そろそろ人生と向き合わなければ。

そんなことをここ数日、ずっと考えていた。
それはきっと、目標に向け、頑張る、あの二人を見ていたからだろう。
津田の気持ちは、固まった。
来年、春が来る頃には、実家に帰り、両親の仕事を手伝おう。

津田は一人、店の外に出て冬空を見上げた。
そして、自分の将来と、二人の幸せを願った。

その頃、ちょうど新年を祝う花火が、遠くで上がっていた。
2015年の12月が、去っていった・・・。

〜〜〜

年は変わり、2016年、最初の日。
手をつなぎ、神社にやってきた真白と高橋。
参拝の列はどこまでも続きそうなほど長く連なっていた。

順番が回ってきた二人。手を合わせて、必死に祈った。
真白は、高橋の漫画の新人賞を。
高橋は、真白のケーキのコンテストのことを。
お互い口には出さなかったが、そんなことを願っていた。

そのあと2人は、スーパーに向かった。
元日、意外に空いているスーパーで二人は、鍋の材料を買った。
白菜、ネギ、豆腐、鶏肉、次々にカゴに入れていった。
二人は真白の家に向かった。

テーブルの上に、鍋の準備が出来上がった。
二人は向かい合って、座った。
「やっとこの日が来ましたね、頂きます!」
そう言って、高橋はおいしそうに鍋を食べ始めた。

こうして2016年が始まった。
2016年、みんなにとって、どんな年になるだろう。

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