Challenge ラヂヲ
やる気!元気!本気!
チャレンジするあなたを全力で応援します!!
今日も全員参加でチャレーっす!!!
●3/24(水) LACCO TOWER(生電話出演)、クレナズム(コメント)
●3/25(木) なきごと(生電話出演)
●3/29(月) クリープハイプ(生電話出演)
●3/30(火) back number(ゲスト)
2020年10月1日から
every mon.-thu. 21:00〜23:00 ON AIR に変わりました!!
@東邦ホテルスタジオ
MAIL cr@crossfm.co.jp
FAX 092-262-0787

【担当DJ】
・コウズマ ユウタ
2016/04/01
※節目節目にやってきます、みんなでつくろうシリーズ!
今月やるのは、☆卒業制作「みんなでつくろう!桜物語!!」
別れそして新たなスタートのこの季節を背景に
胸キュンラブストーリーを考えて行きたいと思います。
主人公から始まり、登場人物の背景、物語の行方、
結末を、ドラマチックに想像しながら、
みんなで考えた断片をつなげてひとつの物語を作りましょう!
あなたの独創的な想像力でご参加ください!!
※ご参加いただいた方の中から抽選で1名様に
チャレラヂセットちょっとDELAXをプレゼント!
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■◇ みなさんの案を繋ぎ合わせ、ついに完成 ◇■
みなさん、いかがでしょう??
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タイトル* さくら物語
《3月》
この物語の主人公は、4月から社会人になる22歳、吉野さくら。
桜が満開の時期に生まれたから、この名前を付けて貰った
明るく元気で、そしてちょっとだけおっちょこちょいな女の子。
今日は3月1日。
卒業式を前に、彼女は、4月から入社する会社の
研修に参加することになっていた。
彼女の就職先は、大手の出版社。
雑誌が大好きなさくら。学生時代からあこがれた仕事に、
高倍率の面接をくぐり抜け、採用を勝ち取れたことは、、
さくら自身、不思議に思うところがあるくらいだった。
その初日、彼女はいきなり、遅刻寸前で大慌てだった。
持ち前のおっちょこちょいを発揮してしまい、
電車の乗り換えを間違ってしまったのだ。
慌てるさくら。電車を降り、駅から猛ダッシュ!!!
とそこで、一人の男性にぶつかってしまった・・・
すいません!!と謝るさくら。
その男性は、にこっと笑うと優しい口調で
「急いでるんでしょ?早く行きなさい!!」そう言ってくれた。
さくらは彼に、ぺこりと頭を下げると、再びダッシュで会社へ。
そして、なんとかぎりぎり、研修に間に合った!!
研修室には、大勢の新入社員が集まっていた。
そして、その新入社員たちの前に現れたのは、
なんと先ほどさくらが駅前でぶつかった男性だった。
新入社員の前に立った、その人は、まず自己紹介をした。
「入社に向けての研修を担当します、米田博道(ひろみち)です。」
さくらは、ハッとした。さきほどは慌てて気付かなかったが
その人は、さくらにとって、印象深い人物だった・・・。
〜〜〜
あれは、大学で就職活動がスタートしたばかりの頃。
学校で、企業による就職説明会が行われた日だった。
説明会に遅れそうなさくらは、キャンパスを大急ぎで走っていた。
そして、渡り廊下を過ぎたところで、一人の男性にぶつかってしまった。
その男性は、「大丈夫??気を付けてね」と
爽やかな笑顔で、優しい言葉をかけてくれた。
その笑顔に、さくらは心をつかまれたような気持ちになった。
就職説明会の会場に入ると、しばらくして、
企業の説明担当の人が教室に入って来た。
あれ、あの人?? さくらは思った。
ついさっき、ぶつかってしまった男性だった。
「本日、うちの出版社の説明を担当します、米田博道(ひろみち)です。」
これが米田との出会いだった。
米田は、簡単な自己紹介を終えると、自社の話を始めた。
普段であれば、企業の説明など、ぼーっと時間を過ごしてしまう
さくらだったが、さきほど、ぶつかってしまったこともあり、
米田と名乗るその男性の言葉に耳を傾けていた。
米田は自身の会社の魅力を話し続けた。
その様子からは、自分の会社に、そして自分の仕事に
自信を持っていることが、ひしひしと伝わって来て、
さくらは徐々に、その話に引き込まれていった。
まだ、進路もぼんやりしている自分が、
社会に出たとき、こんなに自信をもって人に話せる
そんな仕事に就けるだろうか?? さくらは不安だった。
そんな中、米田の話す、出版社の話は非常に魅力的で
さくらは、どんどん引き込まれて行った。
私も、あの会社で働いてみたい。
それに、この米田と言う人の下で働いてみたい。
ぼんやりではあるが、そんなことを考えていた。
しかし、米田の出版社はいわゆる大手。
自分なんかが採用されるわけない・・・。
さくらは、少し笑いを浮かべながら、気持ちを打ち消した。
しかし、その後、米田のこと、そして米田の会社のことは
さくらの心の中で、どんどん大きくなっていき、
ついに、その会社に入社することが出来たのだった。
〜〜〜
就職説明会、そして新人研修を担当している米田。
しかしそれは本人が希望したものではなかった!
やる気がないわけではないが、どちらかというと
社内の一部の人間に押し付けられるように任されたものだった。
米田はどちらかというとおっとりした性格。
もちろん、仕事はばっちりやってるし、
しっかり部下のカバーも出来る、良い上司なのだが・・・
周りの同僚や、上司の中には、彼を評価していない人もいた。
優しい性格の彼に、周囲はあれこれ仕事を頼んだ。
その一部が、就職説明会や新人研修だった。
でも、米田は、文句ひとつ言わず、
一生懸命、そして丁寧に、一つ一つの仕事をやっていたのだった。
〜〜〜
さくらは、一人暮らしを始めたばかりだった。
引っ越しの日、やってきた引っ越し業者は
あっという間に荷物をさくらの部屋に搬入してくれた。
小さな部屋には、まだ荷物は少ししかない。
ここで、一人で生活をして、社会人としてやっていく。
少なからずさくらの心には、不安があった。
そんな小さな部屋で、さくらは、ボーっとあることを考えていた
それは、引っ越し業者のアルバイトの一人が、
妙に元カレに似ていたということだった。
もちろん、他人の空似だということはわかっていたけど、
それでもなんとなく気になって、そのことが
頭の中で浮かんでは消えて・・・を繰り返していた。
〜〜〜
さくらは、春生まれだが、ちょっとだけ春が苦手だった。
理由は・・・花粉症。
毎年、春になると花粉症で鼻水、ずるずるになってしまう。
もちろんそれは会社でも・・・。
鼻をすする、さくらをみんな笑っていた。
しかし、一人だけ笑わなかったのが、米田だった。
何故なら米田も花粉症に悩まされていたからだ。
「この時期、つらいよね??」
そういいながら、鼻をすするさくらに
米田はいつも持ち歩いているティッシュを差し出した。
そのうち、二人は、お互いのティッシュをシェアするようになった。
そんなことでも、さくらはちょっぴり嬉しかったのだった。
《4月》
さくらは、みんなの休日に出勤して電話の前に座っていた。
さくらの会社では、休日でも、取引先などから
急ぎの電話などがかかってくる場合もあるので、
誰か一人、電話番として、出勤することになっていた。
その日は、ちょうどさくらの当番。
朝から電話は鳴らず、さくらは暇な1日を過ごしていた。
さくらは目の前に広げた、ミス書類の裏に、
適当に落書きなどをして時間をつぶしていた。
学生時代から、ぼーっとしながら
適当にイラストを描いたりするクセがあった。
するとそこに、休みのはずの米田がやってきた。
というより、ぼーっとして落書きをしていたさくらは、
すぐ後ろに立っている米田の存在にまったく気付かなかった!
「さくら、なにしてんの??」そう言われさくらはハッとした。
直感的に、“怒られる”とさくらは思った。
電話番とは言え、だらしなくぼーっと落書きをしているのは
怒られてもしょうがない、、、そう思っていた。
すると米田はこんなことを言ってきた。
「さくらのその才能を活かして、雑誌の挿絵、書いてみるか?」
その言葉に、さくらは驚いた。
才能??私の落書きが、才能??
まさかそんなことを評価されるなんて考えたこともなかった。
その後、米田からいくつか指示を受け、
数点のイラストを描き上げた。
そして、そのイラストが採用された雑誌が、世に発売された。
そこに作者としての名前が書かれているわけでもなんでもないが、
自分の書いたイラストが多くの人の目に触れる
雑誌として、世の中に出版された。
これはサクラにとっては大きな感動だった。
さくらは初めて、出版社の一員になれた気がした。
〜〜〜
さくらは、あまり料理が得意ではなかった。
一人暮らしを始め、日々の晩御飯作りには手こずっていた。
そんなさくらが、唯一好きだったのがおにぎりを握ること。
小さい頃、母に教えて貰ったおにぎりの握り方。
さくらは、共働きの両親の帰りが遅い時、
自分でおにぎりを握って食べるのが習慣だった。
社会人になってからもさくらは、おにぎりをよく握った。
仕事で遅くなったり、嫌なことがあった夜、
モヤモヤをぶつけるように、ギュギュとおにぎりを握る。
そしてそのおにぎりを食べていると、
なぜか不思議と、ぽろぽろと涙が零れた。
悔しいような、自分が情けないような、さみしいような・・・
いろんな感情を飲み込むように、おにぎりを食べた。
そして、食べ終わると、なぜだか気持ちが落ち着き、
また明日も頑張ろう、、、そんな気持ちになれるのだった。
〜〜〜
さくらは、1つ特集ページの企画を提案していた。
その内容は、GWにまつわる特集。
初めての企画立案の特集ということで、さくらは気合いが入っていた。
上司である米田の協力もあり、
さくらは取材、そして記事への落とし込みを行っていた。
しかし、このさくらの仕事には、大きな不備があった。
その事を米田は、計画当初から気づいていた。
しかし、あえて、さくらには伝えずに、
さくらの自主性に任せ、見守っていた。
そしてその結果・・・さくらの企画は締め切りギリギリのところで
ボツとなり、掲載は見送られることになった・・・。
さくらは米田に詰め寄った。
「どうして教えてくれなかったんですが?」
米田は、優しく答えた。
「僕が教える教えるより、君自身に気付いてほしかった。
この失敗は君の大きな糧になる。。。
この経験、今の気持ちを決して忘れないでください。」
米田の言葉は、悲しさでいっぱいだったさくらの心に
じんわりしみ込んでいくようだった。
そしてさくらは、必ず成長し、いつかしっかりと特集を作りあげよう!
そう、決意したのだった・・・。
〜〜〜
会社のみんなで行く、お花見の日。
毎年恒例のお花見、新入社員のさくらたちも含め
みなそれぞれ、1つずつ料理を持ち寄ることになっていた。
料理が苦手なさくらは、どうしようか迷った末に、
全員分のおにぎりを握って、持って行くことにした。
朝から、たくさんのご飯を炊き、1つ1つ丁寧に握ったおにぎり。
お花見の華やかなお弁当の中に並ぶと、非常に地味なように思えた。
それはまるで、派手な出版社の中で働く
田舎から出てきてさくらのようで、少し悲しい気持ちになった。
おしゃれなサラダや、唐揚げを持ち寄った先輩女子たちは、
そのおにぎりを見ながら、ちょっとビックリしたような表情を見せた。
そんな微妙な空気の中、米田は、おにぎりを目にすると、
「お、このおにぎり、うまそーー!!」といって
いきなりパクリと、おにぎりをほおばった。
さくらは、ドキドキしながらその様子を見ていた。
そして米田はこういった。
「うめぇー!!塩加減も握り具合も絶妙じゃん!!」
その言葉を聞いて、周囲のみなが、おにぎりを頬張った。
美味しい、美味しいと言ってくれる、みんなをみながら
さくらは、また少し、会社の一員に溶け込めたような気がした。
《5月》
休みの日、さくらは気分転換に買い物に出かけた。
久しぶりに休日の街中で、洋服でも買おうと出かけたのだ。
ブラブラと歩いていると、、、一人の男性に声をかけられた。
「もしかし、あのー、こないだ引っ越しの時・・・」
そう言われ、さくらは思い出した。
元カレに似ていた、あの引越し業者のアルバイトの人だった。
そのあと二人は、近くの公園であれこれ話をした。
彼の名前は、篠田源太(シノダ・ゲンタ)、通称・ゲンちゃん。
話してみると、彼とさくらには、いくつか共通点があった。
まず同い年。そして同じ県の出身だった。
大学には行っていない彼は、夢を追いかけこの町に来た。
彼の夢は、プロのカメラマンになること。
アルバイトをしながら写真コンテストに応募する写真を撮ったり、
夢の実現に向けて頑張っていた。
この町に住んで、2年という彼は、
一人暮らしを始めたばかりのさくらの困っていることを見抜き、
そしていろんなアドバイスまでしてくれた。
さくらは、仕事以外で、初めて知り合いが出来たことが嬉しかった。
それになりより、雑誌の編集などをするさくらと
写真を撮るゲンちゃんには、共通する話題も多かった。
二人は、お互いの時間が会う時に、よく会うようになっていった。
《6月》
その月、特集ページは、お勧めのデートプランだった。
遊園地や、動物園、レストラン、ホテルのBAR。
様々なシチュエーションを取材して回る。
移動の営業車の中で、運転は米田。
そしてさくらは、少し緊張気味に助手席に乗っていた。
取材とはいえ、米田と一緒にデートコースを回るのは
ちょっと楽しくもあり、気恥ずかしくもあった。
コンビニの駐車場で休憩をしていた時。
ふと、米田がさくらにこんな質問をした・・・
米田「さくらは、、彼氏とデート、どんなとこ行くの??」
いきなり聞かれて、焦るさくら。
さくら「私、彼氏なんていませんよ、米田さんは、どーなんですか?」
自分の口から出た言葉に、さくらはビックリした!
米田に恋人がいるのか、聞きたい気持ちはあったが、
まさか、そんなことを自分が実際に聞くなんて信じられなかった。
しかし、まさにさくらがその言葉を発した瞬間・・・
米田の携帯が大きな音を立てて鳴り、米田はすぐに電話に出た。
電話を切ったあと、もう一度同じ質問をする勇気はさくらには無かった。
そして、質問の答えは、わからないままになってしまった。
〜〜〜
さくらは、月末恒例の残業の日を迎えていた。
なにをするかというと、前月号の雑誌のプレゼント募集のコーナーに
メールやはがきで来ている、たくさんの応募者を
整理して、当選者を選び、そして発送をする。。。
これは、いつも月末に行われ、
そして、新人が担当することになっていた。
はがきやメールには、雑誌を読んでくれている人の、
様々な意見なども書かれているので、
雑誌と読み手の大切な接点ともいえるものであった。
だからこそ、新人がこの仕事をやるようになっているのだ。
しかし作業をするさくらの横で、、、なぜか米田が一緒に作業をしていた。
さくら「米田さん、私一人でやれますから、もう大丈夫ですから!」
米田「違うんだよ、俺は、この作業が好きなの!!
単純作業ってなんか頭の中真っ白にして出来るからすっきりするし、
それに、僕らの作ったものを手に取ってくれる人の
いろんな気持ちが受け取れるような気がするんだよね〜」
そういいながら、米田はもくもくと作業をし、
終わったら、缶コーヒーを1本、さくらにおごってくれた。
甘い缶コーヒーを飲みながら、米田の雑誌に対する思い、
そして、後輩に対する優しさを感じた、さくらだった。。。
《7月》
さくらは落ち込んでいた。
はっきりした理由があるわけではないけど、
漠然とした不安と、仕事に対しての劣等感のようなものが、
彼女の心の中を埋め尽くしていた。
自分はこの仕事に向いているのだろうか。
いつも足ばかり引っ張っている私は、
別の仕事をした方がいいのではないか??
そんなことが頭の中で浮かんでは消えていた。
でも、当然、仕事は次々にやってくる。
細々したことから、かなり労力がかかるものまで・・・
やらなくては!と思えば思うほど、
さくらの頭の中には、様々な感情が浮かんできて、
その思いは、ため息となって、口からこぼれた。
ただ、さくらは“絶対に周囲に気付かれてはいけない”
“これ以上、迷惑をかけてはいけない!!”
そう思っていたので、なんとか周囲には気付かれていなかった。
そんな時、突然米田が、さくらに声をかけた!
「さくら取材行くぞ!急ぎの取材だ!ちょっと付き合って!」
さくらは慌てる「でも、今、やらなきゃいけない作業が!」
米田「そんなん後でいいから!とりあえず車に乗れ!」
米田は、さくらを助手席に座らせると、目的地も言わず
無言のまま、車を走らせた。
そして、30分後、二人は海岸にたどり着いた。
車を降りる米田。ついて行くさくら。
靴のまま砂浜を歩いて行く米田を追いかけながら、さくらが聞いた。
「米田さん、これ、なんの取材ですか?」
米田「取材なんて言ったっけ??まぁ、気分転換も大事だろ!
俺も、1年目の頃かな〜なにやってもうまく行かなくて
この仕事、向いてないのかな〜なんて思った時期があったんだよ!
もういっそ辞めちゃおうかな〜って!!!
で、そん時に、優しい先輩が、仕事サボって、
海にでも連れてってくれたらな〜なんて思ったことがあったんだよね!
まぁ実際は誰も連れて行ってはくれなくて、
ずーっと怒られっぱなしだったんだけどね!!」
そういいながら笑う米田。
その横でさくらは、こらえきれない涙が少しだけあふれた。
そのあと、米田とさくらに会話はなかった。
夕日が沈むまで、二人は海を眺めた。
夕日が沈むと、米田は普段通りに戻っていた。
「やばい、このままじゃ仕事遅れて、取引先に怒られちまう!」
そういうと、さくらを車に乗せ、大急ぎで会社に戻ったのだった。
《8月》
米田の日課は、仕事終わりにボルダリングに行くこと。
社内の女子たちも米田にくっついて、ジムに通っていた。
米田はいつも自分のペースで壁に上り、ひとしきり汗をかいて
その後、飲みに行く女子たちをよそに先に帰って行くのだった。
ある日、米田に誘われ、さくらもボルダリングに行くことにした。
初体験のボルダリング。当然、思うようには登れない。
さくらは必死で壁を上るが、ついに壁から落ちてしまった。
スローモーションになる景色。全身に力が入る。
と、次の瞬間、誰かが自分の体を優しく包み込んでくれた。
そう、さくらは、米田の腕にしっかりと抱かれていた。
《9月》
シルバーウィーク。
会社は休みだが、予定がないさくら。
うーん、なにかすることはないだろうか。
そんなことを思っていると・・・
ゲンちゃんは、一人で、星空の撮影に山の方のコテージに行くらしい。
さくらは、すぐに「私も連れてって!」そう言うと、
ゲンちゃんに有無を言わさず、コテージ行きをへ決定してしまった。
そして、当日。
コテージに着くと、ゲンちゃんは、さっそく機材をセットし、
夕食を済ませると撮影に取り掛かった。
さくらはその横で、ぼんやりと星空を眺めていた。
すると・・・大空を横切るように、流れ星が流れた
さくら「今、なんかお願いした??」
ゲンちゃん「別に、、、してないけど?」
聞かれて、ゲンちゃんは焦っていた。
心の中で、“この時間が少しでも長く続けばいいな〜”
そんなことを思っていたのだった・・・。
黙って星空を見上げる二人。
さくらはその後、いつの間にか眠ってしまっていたのだった。
〜〜〜
ある日、さくらは、ゲンちゃんと待ち合わせをしていた。
いつでもどこでも、原チャリでやってくる、ゲンちゃん。
原チャリを止めて、二人で歩きながら、公園に向かった。
この日は、ゲンちゃんがコンテスト用の写真を撮るという事で
まだまだカメラの知識なんて、ほとんどないさくらは
勉強のつもりで、お供させてほしいとお願いしたのだった。
公園で、被写体を探す、二人。
ゲンちゃんは、気になった風景を写真に撮り始めた。
いつもはお調子者のゲンちゃんだが、
ファインダーをのぞき込むその顔は、真剣そのもの。
その表情に、さくらはいつも、少しドキッとするのだった。
ゲンちゃんは、不意にさくらの方にカメラを向けた。
さくら「ちょっとやめてよー」
そんなことを言いつつ、二人はあちこち写真を撮って回った。
ゲンちゃんは、時より、さくらにもカメラを向け、シャッターを切った。
そのゲンちゃんが撮った写真。
その表情は、さくら自身も見た事がない笑顔を捉えていた。
“私、こんな笑顔、出来るんだ”
さくらは、ゲンちゃんが笑顔を引き出してくれたこと
そしてその一瞬をとらえてくれたことが嬉しかった。
ゲンちゃんの写真、素敵だな。
さくらは心の中で、そんなことを思っていた。。。
すると突然「おーい、さくらじゃないの??」
声をかけられて振り向くと、そこには米田がいた。
米田は、さくらの方を見て、ニヤッとすると・・・
「あれ、彼氏、出来たの??」そういった。
さくらは“違います、彼氏じゃないです!”
と言おうとしたが、米田はすぐに「じゃーねー!」
と立ち去ってしまった・・・。
さくらは、すぐ後ろにいたゲンちゃんに、
「あ、あれ、会社の上司」と説明したが、
そこから、なんとも微妙な空気になってしまった・・・。
それに、次、米田に会ったとき、なんというべきか。
さくらは、心の中に、なにかモヤモヤするものを抱えていた。
《10月》
さくらは、得意のイラストから派生して、簡単な漫画を
会社のオフィシャルブログに掲載するようになっていた。
きっかけは、米田の言葉だった。
「せっかくなら、取材でのエピソードとか、出版社の裏側を、
さくらのイラストと文章で漫画にして、ブログにアップしてみたら?」
イラストや、文章の練習のような意味合いもあったし、
ちょっとした遊びのつもりで、さくらはブログの更新を始めた・・・
が、これが、さくら、そして米田の運命を
大きく左右することになるとは、この時まだ、二人は知らなかった!
《11月》
仕事終わりのボルダリング。
熱が冷めた女子社員たちは、もう誰も来なくなっていた。
が、さくらだけは、米田に付いて、熱心に通っていた。
必死に練習するうちに、さくらも、徐々に登れるようになっていた。
ある日、米田とさくらは、並んで壁を上っていた。
米田が先に上り、それを追うように、すぐとなりをさくらが登る。
そして、壁の高い位置まで登ったところで・・・
米田「もうちょい大きい壁、一緒に登らないか??」
米田は、真剣な表情で、さくらに言った。それは米田の突然の告白だった。
しかし、さくらは「喜んで!!どんな仕事でも頑張ってやります!」
元気よく、そう答えた。
自分の伝えたかった本来の気持ちとは、
ちょっとずれてる、さくらの受け取り方。
でも米田は、ひとまず「がんばろう」とさくらに返した。
《12月》
あの日の、さくらの勘違いから、
米田は、以前からぼんやりと考えていた事を
ちょっとずつ具体的に、考え始めていた。
大きい壁を一緒に上る。その言葉が、自分の中で力になっていた。
そして、ついに決意を固めた米田。さくらに真剣な表情で打ち明ける。
米田「実は、前々から、ちょっと考えてたことがある。
さくらが、会社のHPにアップしてるブログ。
あれさ、エッセイ本として、発売してみないか??」
その言葉を聞いて、さくらは意味がわからなかった。
たしかに、自分が書いている漫画コラムは
多少SNSで話題となりアクセスが増えたとは聞いていた。
しかしそれを本にして出版するなんて、考えてもみなかった。
そしてこれは米田にとっても、大きな決断だった。
米田自身、雑誌などの編集で、責任のある立場を
任されるようになっていたが、
それでも自分の責任編集で本を創刊したことは一度もなかった。
しかし米田は、絶対的な自信を持っていた。
さくらの書く、親しみやすいイラストと、
少しシニカルで、でも的を得ている文章は、
米田の目から見ても、魅力的なものだった。
きっと読者を引き付けるに違いない・・・。
米田はずーっとそのことを思っていたのだった。
そして米田はさくらにこう言った。
「新人ライターとして過ごした1年のこと、
経験、葛藤、その全部を1冊の本にまとめよう。
出版業界だけじゃない、たくさんの新入社員を
励ます一冊になるかもしれないよ。」
二人は、エッセイ本の制作に取り掛かったのだった。
《1月》
二人は、ひたすらエッセイ本の制作に追われていた。
もちろんその作業は、通常の雑誌の取材や編集作業の
合間を縫う形で行われていたので、作業は深夜にまで及んだ。
足りない漫画、イラストを書き足したり、
ブログではネタにしなかった新たな記事を書いたり・・・
神経をすり減らせながら、しかし少しずつ完成する原稿が増えて行った。
《2月》
エッセイ本のための原稿を書きつつ、
既存の雑誌の特集の締め切りにも、さくらは追われていた。
以前、さくらは、GWの特集記事で大失敗をしてしまい
それ以降、自身の立案による記事は担当していない。
いつも同僚や先輩が立ち上げた特集の取材やフォローに徹していた。
しかし、4月に発売される雑誌に向け、さくらは特集の企画を立案した。
自分の生まれた大好きな季節、春の桜特集。
エッセイ本の制作をやりながら、
なんと特集記事の担当もやると言い出したのだった。
もちろん、米田は、無理をするな!と止めたが、
しかし、さくらにとってはどちらも、どうしてもやりたい仕事だった!
この仕事に就いて、まもなく1年。
あの失敗を、取り戻したい。怒涛の2月を過ごしていた。
〜〜〜
エッセイ本の制作は、それなりに順調に進んでいたが、
さくらは会社からの帰り道で粉雪が舞う中、桜並木の道を歩いていた。
少し気分転換、そりゃストレスも溜まる。
米田との会話でも、少し棘のある言い方をしてしまったり・・・
反省しつつ、まだまだやらなくてはいけない作業は山積み!
気持ちをリセットしなきゃと、普段はバスで帰る道のりを歩いて帰っていた。
去年、ここで、会社のみんなでお花見したときは、いろいろあったな〜。
今年は、どんな気持ちで、お花見、迎えられるかな〜。
さくらは、ぼんやりとそんなことを考えながら歩いていた。
すると、そのとき後ろから冷たい手のひらがさくらの頬を包んだ。
「冷たい!!?」びっくりするさくら。
「びっくりさせちゃった!?」笑いながらおどける米田。
さくら「もう、米田さん子供みたいなことしないでください!!
びっくりしましたよー。」
米田「たまたまさくらを見つけたから驚かせてみようかと思って!」
さくら「なんでこんなところにいるんですか??」
米田 「いやーまぁーなんていうか、気分転換!色々、煮詰まってるし」
さくら「私もです。。。いろいろごめんなさい」
米田はなにも言わなかった。そして、少しして・・・
米田「さくら、マフラーしなくて寒くないの?
風邪ひいたら、出版遅れちゃうよ!それだけは困るんだよなー!
大事な作家先生ですから〜俺のマフラー貸してあげるよ!
米田はそういうと自分のマフラーをさくらの首に巻いてきた。
大丈夫ですよー!というさくらをよそに、米田はマフラーを巻き終えた。
そして、「もうちょっとだけ、頑張ろうな」
そう言い残すと、米田は、じゃ!と手を振り帰って行った。
一人になったさくらは、マフラーからする、米田の匂いを感じていた。
そして、エッセイの出版に向け、また一つ、気合いを入れたのだった。
〜〜〜
そんな出来事の翌週、突然、米田が会社を休んだ。
どうやら、風邪をひいたらしい・・・
あの日の出来事が直接関係してることはないと思うが
さすがにこの時期、米田が休むのは、緊急事態!
さくらは、驚き、そして焦っていた。
しかし、すぐに冷静さを取り戻した。
そう、焦ってる場合ではない!仕事を進めなくては!!!
そこからは無我夢中だった。
米田は3日間ほど仕事を休んだが、その間、さくらは、
自分の仕事はもちろん、米田の分の作業も進め、
さらに、深夜までエッセイの仕上げにも取り組んだ。
その様子を見ていた、同僚、そして上司たちは驚いた。
そしてなにより、さくら自身が驚いていた。
1年前、ただただ足を引っ張っていた自分が、
いつのまに成長していることを、自分自身が感じていた。
仕事に戻って来た米田は、優しい笑顔で、
「さくら、本当にありがとう。」そう言って、小さく頭を下げたのだった。
〜〜〜
さくらが仕上げた、特集の記事をチェックする米田。
その中に、到底、さくらが撮ったものとは思えない写真がいくつもあった。
それは、プロが撮影したと思える写真。さくらに撮れるはずがない。
不思議に思った米田が、さくらに事情を聞く。
さくら「実は、友達が手伝ってくれたんです・・・。」
これが、米田と、ゲンちゃんが出会うきっかけとなった。
米田はゲンちゃんの写真をいくつか見たうえで、
カメラの才能、しっかりしたテクニックを持っていることを見抜いた。
そしてすぐに見習いとして、撮影に同行させ、
ゲンちゃんは、いつのまにか、出版社に出入りするようになった。
〜〜〜
米田、さくら、ゲンちゃん。
3人は、雑誌の特集、そしてエッセイの制作と、
時間を共有することが増えていた。
その中で、ゲンちゃんは気付いた。
さくらは、米田のことを思っている。
そして、米田もさくらのことを思っている。
それは、会社の上司と部下という関係を超えた思い。
ゲンちゃんは、そのことに気付いてしまったのだった。
仕事をしながら、撮影をしながら、ゲンちゃんは考えた。
そして、ゲンちゃんなりの答えを出した。
・・・自分は、身を引こう。
ゲンちゃんは、少しだけ、さくらに距離を置くようにした。
すると、さくらが、その事に気付いた。
さくら「ねえ、ゲンちゃん、、、なにかあった??」
ゲン 「俺さ、彼女出来たんだ」
さくら「え、、、そ、そうなの、それはーおめでとう!」
ゲン 「だから、もっと写真を頑張らなきゃなー」
ゲンの言葉は嘘だった。
しかし、ゲンはこれで、改めて、カメラの仕事を頑張る決意を固めた。
そして、さくらの中でも、1つの決意が、より固まっていった・・・
《3月》
3月1日、思い返せば、去年、研修で初めて会社に来た日。
米田と駅前でぶつかった、あの日から1年。
その日に、さくらの初めてのエッセイ本が完成した。
そしてその本は、約3週間後に、地元の書店を中心に
販売されることが決定した。
〜〜〜
3月20日、さくらのエッセイが、ついに書店に並んだ。
もともとブログやSNSで話題になっていたこともあり、売り上げは好調。
そして、その事が様々なメディアで取り上げられた。
新人ライターの1年間を、面白おかしく漫画と言葉で綴った1冊は、
“新社会人が元気を貰える1冊”ということで、あちこちで紹介され、
当初、地元だけの出版の予定だったのがその後、増刷。
4月からして全国で販売されることが決まった。
《4月》
4月1日、さくらのエッセイがついに全国の書店に並んだ。
そして発売から1週間ほどで、初版が店頭から消え、
すぐに増刷が決まった。どんどん話題は、広がっていった。
ちなみにエッセイの表紙には、さくらの写真が使われていた。
凄く美人に〜という写真ではないが、自然のままの、
そして素敵な笑顔をしているさくらが写っていた。
この写真を表紙に選んだのは、米田だった。
写真を見た瞬間、表紙はこれにしよう!米田はそう思った。
そして、この写真を撮ったのは・・・そう、ゲンちゃんだった。
ゲンちゃんは、試用期間を経て、4月から、正式にカメラマンの一員として、
さくらと同じチームで、働き始めていた。
〜〜〜
さくらは、こうなることを望んでいた。
それに、ゲンちゃんが嘘をついていたことも分かっていた。
わかってるけど、それもゲンちゃんのやさしさ、
そして、ゲンちゃんの決断と受け止めて、恋人が出来たという
ゲンちゃんの言葉に「それは、おめでとう」と返したのだった。
春から同僚になったゲンちゃん。
さくらはその事が、すごく、うれしかった。
〜〜〜
社内恒例のお花見の日。
今年もにぎやかに、みなが持ち寄ったたくさんの料理とお酒で
社員一同、花見を楽しんでいた。
そんな中、社長が立ち上がり、話を始めた。
社長に名前を呼ばれる、米田とさくら。
二人は社長の前に呼ばれる格好になった。
それは、二人にとって、初めての社内表彰だった。
大きな功績を挙げたものを表彰するこの制度。
今回は、二人で制作したエッセイのヒットを受け、
このお花見と言う場で、表彰をしようと、
重役会議、満場一致で決まったのだった。
社長に賞状を貰い、照れる二人。
その後、エッセイを読みながら、社員みんなで多いに盛り上がった。
自分のことを書かれているのに、笑いがこみ上げてしまうのだった。
女子社員たちも「流行に敏感!でも熱しやすく冷めやすい女子たち」
のページを読みながら、
「ボルタリングに来なくなった女子たちって、これ私たちのこと!?」
などと言いながら、みな大笑いしているのだった。
1年前、この花見の席は、さくらにとって、居心地の悪い場所だった。
しかし1年が経って、こんなにも景色が変わって見えるのか。
去年、みんなの前に、おにぎりを出したとき、
なんとも居心地が悪く、そして肩身の狭い気持ちを感じていた。
ただ真っ白なおにぎりなんて、誰も食べてはくれないだろうな。
そんなことばかり思って、周囲の人の顔も、綺麗な桜も
全然見れずにうつむいて時間をやり過ごしていた・・・。
しかし、あの日、米田が美味しいとおにぎりを食べてくれて、
そこから米田のおかげで、いろんなことが変わっていった。
1年という時間を経て、自分自身でも、少しではあるが成長を感じていた。
だからこそ、さくらは今年も、去年と同じおにぎりを握って来た。
そのおにぎりには、去年は無かった、自分の自信と、
そして、米田をはじめ、みんなに対するたくさんの感謝を込めた。
去年と同じ桜の木の下に居ながら、去年は気付けなかった、
みんなの笑顔、そしてキレイな桜の花びらを、
さくらはしっかりとその目に焼き付けていた。
〜〜〜
さくらと同じく、米田も達成感にあふれていた。
そして、米田にいろんなことを押し付けてた同僚も、
今回のことで、米田に対する見方をだいぶ変えていた。
1冊のエッセイのヒット。
それは米田とさくらのふたりに、大きな変化をもたらす結果になった。
〜〜〜
そんなお花見も、お開きの時間がやってきた。
みなで片付けを済ませ、そして絶妙のタイミングでゲンちゃんが声を上げた!
『さぁーみなさん、今日はこのまま、二次会に向かいますよ!!
二次会会場までは、僕が案内しますから、ついて来て下さいねー」
新人のくせに、みんなを率いて2次会へ行こうとするゲンちゃん!!
ゲンちゃんは、人並み外れた明るさ、コミュニケーション能を持っている。
その力をフルに活かして、会社には早くもしっかりと溶け込み、
こんな場面で、みんなを引っ張って案内係りを務めるまでになっていた。
ゲンちゃんは、大きな声で、みんなを二次会会場へ向かわせる。
そして「さくらちゃん、あとちょっとだけ片付けあるでしょ??
それやっといてよ!あ、あと悪いんですけ、米田さんも
さくらちゃんが荷物運ぶの手伝ってあげてもらっていいですか?」
さりげなく仕事をおしつけるゲンちゃん。
だけど、これは、ゲンちゃんなりの優しさだった。
勢いに押されて、頷く二人。
それ以外の社員たちは、二次会会場へ向かう。
ゲンちゃんは、小さな声で「米田さん、あとは、お願いしますよ」
そう小さく呟くと、また大きな声で、行きますよー!!
と全員を率いて、あっという間に、去って行ったのだった。
〜〜〜
取り残された、米田とさくら。
残りの荷物〜とゲンちゃんに言われたが、そんなものは残っていない。
急に静かになった花見会場。
二人は、少し困ったように見つめあうと、
米田「ちょっと歩こうか・・・」
二人は、川沿いの道を歩き始めた。
その道も、桜は満開を迎えていた。
〜〜〜
歩きながら、この1年のことを二人とも振り返っていた。
実は1年ほど前にも、この道を二人で歩いたことがあった。
その頃は、もう桜は散ってしまっていたが、
仕事で失敗して落ち込んださくらを、励ますために米田が連れてきたのだ。
さくら「前にも、ここの道、歩きましたよね」
米田 「そうだっけ?いろんなことがあって、忘れちゃったなー。笑」
さくら「ひどーい、二人でいろんなこと頑張って来たじゃないですか!」
米田 「そういわれるとそんな気もするけど、でも忘れちゃったなー」
さくら「ひどいなー・・・」
米田 「でも、これを見たら、あれこれ思い出すかもしれないな〜」
そういうと米田は、カバンから1冊の雑誌を取り出した。
その雑誌のタイトルは、「さくら年鑑」
なにこれ?そう聞くさくらは、ページを開いてみた。
するとそこには・・・この1年のたくさんのさくらの写真があった。
普通に仕事をしていたり、取材に行ったときの緊張の表情、
残業で居眠りしちゃった時や、お花見で失敗したあの日のこと・・・、
「こんな写真、いつの間に??」
さくらは、まったく気付かなかった。
さらに、写真だけではなかった。
その写真の下には、米田のその時の思いが、
たっぷりの文章で綴られていた。
1ページ、1ページ、めくるごとに、その場面がよみがえり、
さくらは、涙があふれ止まらなくなるさくら。
それはまさに、世界に1冊だけのさくらの本だった。
米田「2月にさ、俺風邪ひいちゃった時、あったでしょ?
あの頃、まさにこれの編集に追われててさ。
で、疲れも溜まって、風邪をひいちゃったんだよね!」
少し笑いながらそういう打ちあける米田。
涙をぬぐいながら、さくらが答える
「・・・そんなんで休んでんじゃねーよ!」
“無理しなくてよかったのに!”
そんな返答を想像していた米田は一瞬、ビックリしたが、
結局、二人とも、声を出して笑っていた。
ページをめくるさくら。
ついに最後のページにたどり着いた。最後のページ、そこには・・・
「あのおにぎりを、これから、僕のために作ってください!!」
米田自身の文字で、しっかりと書かれていた。
それは、普通、告白には使わない言葉だが、
二人の間では、しっかり通じ合う言葉だった。
そして、その問いに対して、さくらは声に出して答えた・・・
「はい!!!もっと大きな壁、一緒に上りたいです!」
その言葉を聞いて、米田は、全てを悟った。
さくらに思いを伝えようと、一緒にボルダリングをしながら
「大きな壁、一緒に登らないか?」と伝えたあの日。
さくらは、告白と気付かずに仕事の事と勘違いした。
だけどそれがきっかけで、一緒にエッセイを作ることになった。
しかし、さくらは、あの言葉の意味をしっかりと理解していたのだ。
理解している上で、敢えてあの場面では
仕事のことという風に受け止めていたのだ。
米田は、ニッコリ笑った。
そして、さくらの手を、ギュッと握り、二人は歩き出した。(仮)
《3年後・4月》
米田とさくらは、結婚式の高砂に二人並んで座っていた。
あの日から3年、二人は結婚式の日を迎えた。
会場では、ゲンちゃんがカメラマンを務めていた。
自分から身を引いた、さくらの結婚式。
複雑な心境・・・かと思いきや、
ゲンちゃんは、、、ニコニコ笑顔でカメラマンをしていた。
ちなみにゲンちゃんの足元には・・・2歳の息子が走り回っている。
ゲンちゃんは、二人の先を越し、パパになっていた。
さくらは、ゲンちゃんの影響で、原チャリの免許を取り、
今では、原チャリ同士、機動力をいかしてあちこち取材に行っていた。
そう、二人は、よき同僚、よき仲間になっていたのだった。
そんなゲンちゃん、会社の仲間、大勢の人たちに祝福され
さくらと米田は、満面の笑顔で並んでいた。
ちなみに、さくらと米田が作ったエッセイ「さくら物語」は
その後も、毎年春が来ると、書店の目につく位置に展開され
多くの新社会人を元気づけて、いたのだった。 <完>
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